宅建の民法96条 詐欺取消 第三者との関係

(詐欺又は強迫)
第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

詐欺についても、虚偽表示の第三者保護規定(94条2項)と同様の規定が、96条3項におかれています。

甲→←(騙す)乙→←第三者

土地

甲が乙に騙されて、土地を乙に売却し、乙はさらに丙に対して土地を転売した。甲は、甲乙間の売買契約を取消とともに、丙に対して土地の返還請求をした。

この場合、丙は、善意であるならば、96条3項によって、保護されることになります。善意というのは、甲が乙に騙されて土地を売却したのではないということです。
また、96条3項についても、94条2項同様。第三者が保護されるために無過失である必要はあるのかという問題があります。
学説の多くは、96条3項は、94条2項同様、権利外観法理の現れであるとして、第三者が保護されるためには、無過失も要求するべきではないかとしています。
しかし、判例は、94条2項同様、善意のみで足りるとしています。

次に、第三者丙は、いつまでに権利関係に入る必要があるのかという問題があります。
甲が詐欺に気づいて、甲乙間の売買契約を取消す前に乙と丙の間の売買契約がなされた場合(取消前の第三者)
甲が詐欺に気づいて、甲乙間の売買契約を取消した後に乙と丙の間の売買契約がなされた場合(取消後の第三者)
どちらの例でも、結論に違いはないのかという問題です。

取消前の第三者については、96条3項によって、保護されることは疑いようがありません。
契約が取消されると遡及効といい、契約関係が過去にさかのぼってなかったことになります。(民法121条) 遡及効から第三者を保護するための規定が96条3項だということになります。

(取消しの効果)
第121条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

一方、取消後の第三者については、すでに、取消の遡及効によって、無権利者となっている乙から、土地を購入していることになりますから、保護されないということになります。
しかし、第三者丙としては、甲が取消したとか、甲乙間の売買が詐欺によるということを知らないことが多いわけです。それでも、取消権が行使されていれば、無権利者から買ったことになりますよというのでは、取引の安全を害することになります。そこで、一定の場合には、第三者を保護するべきではないかとしています。
そこで、判例・通説は、
取消は、取消されるまでは、有効であり・・・

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